愛を教えて
「僕を……捨てるのか?」

「あなたが望むなら」


万里子は疲れ切っていた。

愛も未来も……すべてを諦めてしまいたくなるほどに。


「太一郎は知ってるのか? 子供の産めない身体で、普通に結婚なんか」


卓巳はハッとして言葉を飲み込んだ。

だが、もう遅い。


「やっぱり、そのことまで知ってらしたのね」


万里子の声は明らかに卓巳を責めていた。


「だからクリスマスに、あんなふうに言ってくださったのね。だから、私なんでしょう? それなのに、愛してるなんて嘘までついて」

「嘘じゃない。嘘なんか」

「いいえ、嘘よ! だから……そんな女だから……女を抱けない自分でも構わないと思ったんだわ! 私が断るはずがないって」

「違う。そうじゃない、僕は」


万里子は怒りに体が震えた。そして無意識のうちに、傷ついた心が牙を剥く。


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