愛を教えて

(7)挫折

卓巳を藤原邸まで送り届け、宗は自宅のマンションに戻った。

出勤は午後からで充分だろう。

卓巳の様子からそう判断し、シャワーを浴び、ベッドに潜り込む。そして眠りに落ちる寸前、彼の携帯は真夜中を再現するようにけたたましく鳴った。



「社長。恐れ入りますが社長、事情を説明いただけますか? 社長?」


卓巳がおかしい、と連絡を受け、宗はスーツに着替えて藤原邸に引き返した。

今度はさすがに自分の運転ではなくタクシーを使う。


「あの、社長……何か言っていただけませんか?」


卓巳は寝室のラウンジチェアに座り込んだまま、宗の問いにポツリと答えた。


「社長は辞める。あとは……任せる」

「なっ、そんな……何を突然!? 万里子様はどうされたんですか? 社長!」


卓巳が口にしたのはそのひと言だけだった。


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