愛を教えて
悠里が太一郎を罵ったとき、後ろから本人の声が聞こえた。

ビックリしてメイドたちは振り返る。


なんと彼は最悪のタイミングで外泊し、約三十六時間ぶりに帰宅したのだった。




その十分後、太一郎は別棟の二階にある両親の部屋に怒鳴り込んでいた。


「俺がいつそんなことを言った!? あの女と寝たなんていつ言ったんだ!」


メイドたちから昨日のことを聞いた。
自分が利用されたことを知り、太一郎は母親に対して煮え滾るような怒りを覚える。

だが、尚子は素知らぬ顔だ。それは彼女が心の内で、息子を軽んじている証拠だった。


「あたくしは、あなたの気持ちを考えてあげたのよ。正直におっしゃい。あの女が欲しいのでしょう?」


尚子の言葉に太一郎は息が詰まった。

そんな息子の顔色を見ながら、尚子は鼻で笑う。


「あんな女のどこがいいのかしら? 卓巳さんと別れてもまともな嫁ぎ先などないでしょうね。そのときはあなたの愛人にすればいいわ。でも妻はダメよ。卓巳さんの妻だった女を、あなたが愛人にするなんて! ああ愉快なこと」


太一郎は呵々として笑う母親の姿に、恐ろしさを感じていた。


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