愛を教えて
しかし、どれほど見事でも、この時期に庭でお茶を飲むのは寒過ぎる。

暖かい室内でお茶をいただきながら、六月が見ごろだという薔薇と、キャロラインが好きな日本料理の話に終始していた。


元日の朝から卓巳は会社に呼び出された。

そのままなんの連絡もない。もちろん呼び出された事情を知ったところで万里子にできることはないだろう。だが、何が起こっているのか、知れるものなら知っておきたい、そう考えた。

だが、自分の都合でキャロラインを急かすことは躊躇われる。

万里子は根気よく彼女の話に付き合った。


『マリコ、あなたは本当に聞いたとおりの方ね』


ふいにキャロラインは相好を崩し、万里子に親密そうに話しかけた。


『私の何を聞かれたのでしょう? 悪い話でないといいのですけれど』

『優しくて温かく、人の気持ちを思いやれる女性……だったかしら』


万里子は驚き、目を丸くした。


『まあ! キャロライン、私はそんな素晴らしい人間ではありません。もちろん、そんなふうになりたいとは思いますけれど。でも、どなたがそんなことを?』

『私ですよ、マリコ。――昨夜は楽しいひとときをありがとう』


万里子が振り向いたとき、扉を開けて立っていたのはスティーブン・ライカーだった。


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