愛を教えて
ウエスト・エンドから北に車で約三十分走ったところに、プリムローズ・ヒルと呼ばれる小高い丘があった。

そこからはウエスト・エンド方面もシティ方面も一望できる。なだらかな丘に作られた美しい広場だった。

キャロライン・ストラウドの住むセント・ジョンズ・ウッドは、その丘の西側に位置する。ヴィクトリア調のテラスハウスが建ち並ぶ、瀟洒な高級住宅街だった。


『ようこそ、ミセス・フジワラ。突然の招待でごめんなさいね』


キャロラインは四十代半ば辺りに見える。淡い色のブロンドとグレーの瞳を持つ背の高い女性だった。ほっそりした体つきで、すでに独立した息子がふたりいるという。

ひょっとしたら、万里子の想像より年配なのかもしれない。


『お招きありがとうございます。お電話いただいたあとに、ちょうどピカデリーサーカスを通るニューイヤーパレードが見物できて幸運でした』


日本のお正月に比べて、門松などに類した正月飾りは何も見かけない。それどころか、街のあちこちにはまだクリスマスツリーが飾られている。テレビ番組も正月特番一色の日本と違って、至って普通だ。

ただ、ニューイヤーのカウントダウンが派手に盛り上がるせいか、元日は家で過ごす人が多いと聞く。

街は観光客ばかりが目立っていた。


『ミセス・ストラウド』と呼びかける万里子に、『キャロラインと呼んでちょうだい』と言われる。万里子は『では、私もマリコと』と答えた。


ガーデニングの本場と言われるだけに、とくに裏庭は見事にコーディネートされていた。


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