愛を教えて

(8)キスの時間

ホテルに戻った万里子はフロントからメッセージを受け取る。卓巳からだ。

続きは今夜、と言っていたが、今夜はホテルに戻れない、というメッセージだった。


昨日はあんなに具合が悪かった。今日は、ちゃんと食事を取っているだろうか。仕事だから仕方がないとはいえ、ちゃんと眠れるベッドがあればいいのだけど。

万里子はそんな心配ばかりしてしまう。


そしてメッセージの最後に書かれた文字、


――ストラウド邸は楽しかったかい?


万里子はドキンとする。ライカーのことを思い出し、卓巳になんと説明しようか、悩む万里子だった。




翌朝、万里子は卓巳の着替えと差し入れを用意して、フジワラ・ロンドン本社ビルを訪ねようと考えていた。

しかし、万里子が行動に移す前に、卓巳のほうが着替えと朝食に戻って来たのだ。


卓巳は大変そうだが、二日前までの病的な様子とは顔色が違う。瞳にも力が戻ってきていた。

彼は万里子の顔を見るなり、真っ直ぐに駆け寄り抱き締めてくれた。


「ひとりにして本当にすまない。この埋め合わせは必ずするから」


そう言うと、すぐさまウォッシュルームに消える。


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