愛を教えて
ジェームズは気づいていない、自分が何個もの地雷を踏みつけていることに。

万里子に手を出した時点で取引など成立するはずがなかった。


そのとき、卓巳の携帯が鳴った。メールではなく電話だ。


『ジェイクか。どうだ?』

『今そちらに向かってます。ですが、サーがロンドン近郊で使用する部屋は、個人で所有する邸宅やアパートメントにコテージ。賃貸のフラットやホテルまで合わせると二十ヶ所近くあります。とても短時間で絞り込めるものでは……』

『ああ、そうか。それはよかった。報告は――ちょっと待ってくれ』

『え? あの』


電話の向こうで驚くジェイクを無視し、卓巳はニヤリと笑った。

そして、ジェームズに向かって言い放つ。


『ジェイクがサーの居場所を割り出した。だが、勤続三十年に敬意を表して三秒やろう。君が私に貢献できる最後のチャンスだ。スリー……』


カウントを始めた卓巳に、ジェームズは慌てて叫ぶ。


『待ってくれ! ホテルはメイフェアの――』


卓巳は携帯を切る。


『君は正しい判断をした』


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