愛を教えて

(5)傷ついた女神

なんの迷いもない卓巳の行動に、ライカーは理不尽な怒りを覚えていた。


『待て!』


ライカーは逼迫した声で卓巳を制止する。

彼はその怒りに心を奪われ、更なる愚行に及んだ。無造作に万里子の腕を掴み……。


『万里子に触れるなっ!』


殺気立った卓巳の声に、ライカーの動きは一瞬止まった。

しかし、口角を吊り上げ、いやらしい笑みを浮かべると、ライカーは万里子を自分の腕の中に引き寄せた。

そして、とんでもなく醜悪な言葉を口にする。


『おいおいタクミ、それが人にものを頼む態度かな? 君は妻の破廉恥を棚に上げ、私のホテルに乗り込み、乱暴を働いた。きちんと謝罪してもらおう。そう……日本人が得意な「ドゲザ」をしてもらおうか』


その瞬間、弾かれたように万里子が声を上げた。


『やめて! もうやめてください……お願いします』


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