愛を教えて
「愛し合って授かった命だ。僕たちが、ね。ただ――少し早かった。早過ぎて、君をひとりにしてしまった。辛い思いをさせてすまなかった。二度とさせない。僕を許して欲しい」


万里子は困ったような笑みを浮かべ、首を左右に振る。


「いやだ、卓巳さんたら。どうしてあなたが謝るの?」

「万里子、日本に戻れば心ない誰かが、堕胎の過去まで引っ張り出してくるかもしれない。そのときはこう答えればいい――『子供の父親は藤原卓巳だ』と。君の子供の父親は、この僕しかいない」


泣きたくないのに、信じられないくらい幸福なのに……。

万里子は天井のライトが何重にも見えてくる。


「あまり、優しくしないで……本当にそう思ってしまうから」

「信じてくれないのは辛いな。じゃあ、信じてもらうために二度目のセックスの話をしよう。今から一週間ほど前、僕は初めてダイニングテーブルの上で身体を重ねた」

「もうダメよっ。それ以上は言っちゃダメ!」


万里子は起き上がり、両手で卓巳の口を押さえようとした。


「僕は初めて彼女の可愛らしい部分にキスをして……彼女はとっても気持ちよさそうな声を」


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