愛を教えて
卓巳は万里子から逃れながら、少年のように笑う。万里子は卓巳の背中をバンバン叩いた。


「もう、卓巳さんの馬鹿っ! 意地悪なんだからっ」

「疑われちゃ敵わないからね。三回目のセックスがどれほど素晴らしかったか。彼女の身体の、すべてを知った瞬間も話して上げようか?」


万里子は降参だ。口では卓巳に勝てそうもない。


「わかったわ……わかりました。ごめんなさい。でも、本当に嘘つきだなんて思ってなくて、ただ、とっても素敵だったって言いたかったの。ごめんなさい」


卓巳の背中にそっと頬を寄せ、万里子は囁く。すると、卓巳はクルリと向き直り、真顔で万里子に口づけた。

卓巳の手は毛布の中に滑り込み、万里子の背中を撫で…………キュルルルー。

それは、万里子のお腹が鳴る音だった。


「や、やだ……ごめんなさい。でも、凄くお腹が空いて」


万里子は恥ずかしくて身を捩る。

でも卓巳は笑いも怒りもせず、


「そりゃあそうだろう。三日間点滴とスープじゃダイエットにも限界だ。さて、まずは胃に優しいものを食べに行こう! ――今夜のためにも」


二万回が三万回になりそうと思い、万里子は曖昧に微笑んだ。


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