愛を教えて
「お迎えは、宗さんひとりだと……」

「ああ、僕もそう聞いていた」


宗は困ったような笑みを浮かべている。


「お帰りなさいませ。無事にお戻りいただけて何よりでした」


控え目な声で遠慮しつつ声をかける。だが、彼が遠慮しているのは卓巳たちにではなかった。

宗の隣には万里子の父、千早隆太郎が立っていたのである。隆太郎の向こうには家政婦の忍も見える。


「お嬢様、お帰りなさいませ」

「忍、どうしたの? お父様も、どうしてこんなところに」


驚く万里子の声を聞いた瞬間、卓巳は思い出した。


(ま、まずい……万里子に伝えるのを忘れていた!)


父親に知られたことは、日本に戻ってから折を見て伝えよう。今後の方針が決まり、落ちついてからふたりで挨拶に行けばいい。卓巳はその程度に考えていたのだ。


まさか、成田空港の出口に隆太郎が待ち構えているとは思わず……。


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