愛を教えて
そんな宗の説明に卓巳は声もない。


「じゃあご夫婦仲がよくなられたんですね。よかったわ! ね、卓巳さん!」


万里子は無邪気に喜んでいる。

だが、これまでがこれまでだ。卓巳にすれば額面どおり受け取ってよいものかどうか悩ましい。何か裏があるのではないか、と勘繰りたくもなる。


考え込む卓巳に、宗は静香の縁談が上手く進んでいることも伝えた。



静香にとって、放蕩の限りを尽くしていた従弟が、突然頭を丸めたのはショッキングな出来事だった。

その上、夜伽まがいの行為を押し付けていたメイドたちにも謝罪を始める。

おまけに、かつて交際のあった、といえば聞こえはよいが、身体目当てで弄んだお嬢様たちにも謝罪する、と言い出したらしい。

だが、彼女たちのほとんどがすでに嫁いでいた。謝罪自体が迷惑をかけることになる、と宗が止めたという。


そんな従弟に加えて、彼女は弟の変貌振りにも驚かされる。

てっきり付属の大学に形式的な試験を受けて進むのだ、と思っていた。静香自身もそうしたからだ。ところが、孝司はセンター試験を受けていた。卓巳と同じ……は無理でも、可能な限り上位ランクの大学を目指すという。

静香は孝司のことを、面白みのない根暗な弟だ、と思っていた。

それが……。


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