愛を教えて
卓巳はかなりの面で他人より優れていた。彼の高いプライドは、自らの欠陥を認めることができず……。


そして卓巳は女性に関するすべてを諦めた。


大学三年で司法試験に合格するほど頭脳と、二十三歳で巨大グループを率いるだけの才覚とカリスマ性を併せ持つ男。

藤原卓巳は数年のうちに、間違いなく日本を代表する経営者となるだろう。

いや、すでに米ビジネス誌の表紙にも掲載され、最もセクシーな日本人経営者と言われている。


そんな卓巳が三十歳まで女性経験がないとは誰も思わないだろう。


結婚はしないのではなく、できない。

女性は愛さないのではなく、愛せないのだ。

卓巳の中に“愛”は存在しなかった。



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