愛を教えて
卓巳はスケジュール調整に苦悩しつつ、宗のひと言で予定日ちょうどに決めた。ところが、子供に裏を掻かれたらしい。


「万里子……もし僕のいない間に何かあったら……僕は」

「大丈夫です。この子のことは私に任せて。私を信じて、卓巳さん」


卓巳は万里子をじっと見つめ、両頬に手を添えると人前であるにも関わらずキスした。


「愛している。君を信じてる。――聞こえるかい、僕のお姫様、いい子でパパの帰りを待ってるんだぞ。ママを困らせるんじゃないよ」


そう言うと万里子のお腹にも口づける。

卓巳は引きずられるように、病室をあとにしたのだった。


担当医や看護師、付き添いに来ている忍や雪音も顔を見合わせて半分以上笑っている。


「うーん、王子様だと写真付きでお知らせしたんだが……。まだ、ご納得いただけないらしい」


そんな担当医の言葉に、万里子は笑顔で答えた。


「すみません。でも、今日までですから。それに、本当は王子様を楽しみにしているんですよ」 


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