愛を教えて
ふたりが結婚した年に、藤原邸の庭に植樹した桜がやっと花を咲かせた。


その桜が八分咲きになった晴天の日曜日に、万里子はお弁当を作り、ピクニック気分でシートを広げる。

久しぶりの“パパも一緒のお出かけ”から戻った子供たちは、ご機嫌でママのお手伝いをしてくれた。

今からやってくる、宗と雪音の娘たちと遊ぶのも楽しみらしい。



「じゃあ来年もイギリスに行きたいって? まあ、よっぽど気に入ったのね。それともお気に入りはアビーのほうかしら?」


観覧車の中での会話を聞き、万里子は複雑そうに笑う。


ジェイクたちは『社長のペースにはついて行けません』と笑っていたが、この秋にふたり目が産まれると連絡があった。

一方、宗たちは『合わせるつもりはありません。予定外です』と言いつつ、卓巳と同じく三人の子供、それも娘に恵まれていた。


卓巳は万里子の頬に唇を寄せ、軽くキスしながら囁く。


「来年こそは、僕たちの娘をジェイクに紹介できそうだな」

「そうね、私たちの四番目の息子を」


そんな言葉と共に万里子は一枚の写真を差し出した。胎児のエコー写真である。そこに映っていたモノは……。


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