愛を教えて
卓巳によく似た長男に比べ、次男の大樹は万里子にそっくりだ。

とくに今は襟首にかかるくらい髪が伸びていて、ズボンを穿いていても女の子に間違われるくらい可愛い。


「今年は無理だろうな。七月に家族が増えるんだ。ママたちを置いては行けないだろう?」


そんな卓巳の返事に、結人が付け足した。


「来年は行けるよ。光希《こうき》だって一歳のときに行けたんだから。そうだよね、お父さん!」


結人は卓巳が抱き上げる三男、光希を見て言った。今年の六月に二歳になる、今のところは末っ子だ。


曾孫の効果であろうか、皐月は当初の医者の宣告よりかなり寿命を延ばし……。そして二年前の春、三人目の誕生を楽しみにしながら天に召されたのだった。


「ああ、来年は六人で行こう。それまでに英語は完璧にしておくんだ。アビーと話せるように、わかったね」

「はい!」「うん!」


手を上げて答える兄たちに倣い、「あーい」と両手を上げ答える光希だった。


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