双子ですけどなにか?【修正終わりました】
【晴人】兄の憂鬱


結局あの日、彩花は泣きはらした目をして、すぐに帰ってきた。

二人そろって学校をサボった事はすぐにバレて、彩花が帰ってきた時点から、二人そろって親父の説教を受けた。

やっと解放され、ホッとしたところで部屋のドアがノックされた。


「晴人、今いい?」


彩花はパジャマに着替えていた。

いつもは勝手に入ってくるのに。

どうにも弱っているみたいだ。


「意外に早かったな」

「うん……。健先輩が、両親に心配かけるなって。でもちゃんと、話はしてきたよ」


彩花はいつものハキハキした声を失っていた。

それもそうだろう。

メガネに会えて嬉しかった事に間違いはないだろうが、それで虐められた事実が無くなるわけじゃない。

明らかに、彩花に敵意を持ったやつがいる。

あんな事をされても、ショックを受けないのは俺くらいだろう。


「……明日から、どうすんだ?」

「行くよ……。行くしかないじゃない」


彩花はボソボソと、メガネと話した事を再生しだした。

そこで俺は初めて、体育祭の時にチャラ男とメガネがもめた事を知った。

すぐに、自己嫌悪が襲ってくる。

俺は、彩花の異変に気づけなかった。

美奈子の事を処理するのが精一杯で、里美が倒れたのを運んで……。それからは、幸せボケしてた。

保健室で約束した通り、バイトの無い日は生徒会を終えた里美を駅まで送って、キスをして、また明日。

そんな幸せな毎日を、ぼんやり過ごしていた。


「何で、早く言わなかった」

「だって……こんな事態に繋がると思わなかったんだもん」


彩花はしょんぼりとうなだれた。


「健先輩が言うには、学校は犯人探しなんかしてくれないから、噂が風化するまで、待つしかないだろうって」

「だろうな……」

「文化祭の時の犯人は、健先輩が顔を見てるから、話をしてくれるって」

「そうか」

「とにかく、落ち着くまでは、ヒナや晴人と一緒にいるようにって」


そうだろうな。メガネの言う通りだ。

こちらからは何もしようがない。

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