碧いボール
第弐章

意地っぱりなあたしたち



あたしは、杏の言った条件を聞いて落胆した。
もっと簡単な条件だと思ってたから。
言う直前の杏の表情から、嫌な予感はしてたけど。
まさか・・・。
「碧いボール」だなんて、絶対無理だ。
あたしたちは弱いから。
中体連で優勝はできないから。
じゃあ、どうする?あきらめる?
・・・だめ。
そんなの、あたしの性に合わない。
優勝すればいいんだ。
「碧いボール」を手に入れる条件のひとつに「努力して手に入れた勝利」がある。
あたしたちみたいな弱いチームが勝利を手に入れることを言うんだ。
だから、頑張れば可能性はあるんだ。
そうか・・・。
でも、それには杏の力は必要不可欠だ。
果たして、退部を考えてる杏たちが協力してくれるか・・・。
杏から条件を突きつけられてるんだから、あたしからも少しくらいお願いしてもいいよね?
あたしは杏たちにむかって言った。
「やってみせるよ。必ず杏たちの退部を阻止する。でも・・・」
杏たちは表情を変えない。
「でも、あたしからも条件がある」
あたしがそう言うと、杏たちが驚いたような表情になった。
そりゃそうだよね。条件の条件だもんね。
しかもそもそもをあたしが言い出したんだもんね。
おかしいよね・・・。
「聞いたこと無いよ。条件に条件をつけるって、どういうこと?」
・・・そのままだよ?
やっぱりそうきたか。言うと思ったけどさ。
「あたしからの条件はね、中体連で優勝するために、杏たちも全力で、本気で頑張ってほしいの。杏たちの力がなかったら、挑戦する前から結果なんてわかったようなもんでしょ・・・?」
杏はなんて言うかな?
「やだよ。あたしたちは退部したいって思ってるんだよ?そんな人が全力なんて出すわけないじゃん」
だろうね。
口では全力でやる、なんて言っても、退部したい人がそんなこと言ってたら、信じられないもんね。
でも、杏は違うから。あたし、知ってるから。
杏は、自分で言ったことにうそはつかないって、知ってるから・・・。
杏がしばらく考えて、あたしを直視してうなずいた。
「しょうがないからね。あたしはちゃんとやるよ。知ってるでしょ?だからさ、麻紀たちうもちゃんとやってげてね」
麻紀っていうのは、うちの8番で、スリーポイントの名手。
麻紀がいなくなるのも困るな・・・。
杏の後ろにいるひとたちもうなずいた。
良かった。
あたしはキャプテンだから、みんなを信じてあげないとだめだよね。
だから今は、杏も麻紀も、誰も疑わない。
みんな、協力してね・・・。
絶対優勝させてみせるからね!!

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