ケイヤク結婚
―綾乃side―
『申し訳ないが、今夜の約束はキャンセルで』

 仕事が終わって、未読のメールを開くと大輝さんからのメッセージがあった。

 絵文字もデコも何もない白黒の文字の羅列が目に入る。

 仕事、大変なのかな。

 9時に店に来なければ、仕事が終わってないと思ってくれって電話で言ってたし。

「どうしたの?」

 理沙ちゃんが、厚手のコートに袖を通しながら聞いてきた。

「大輝さんからメールがあって……」

「お兄ちゃんから? なんだって?」

「今夜の約束はキャンセルって。仕事が忙しいみたい」

「ふうん。んじゃ、夜食を届けに行こうか」

「え?」

 理沙ちゃんも携帯を取り出すと、メールを開いた。
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