ケイヤク結婚
大輝さん、仕事が忙しそうだもんね。平日に休みをいれるなんて。

「わかりました。今週の水曜日に」

「え? 大丈夫なんですか?」

「大丈夫です。どうにかしますから」

 話にひと段落がついて、私たちは車に乗り込んだ。

 水曜日に、結婚式場を探しに行くんだ。

 私はちらりと横に座って運転をしている大輝さんの横顔を見やる。

 隣にいるこの人と、私は結婚式をあげるんだね。

 不思議。私、結婚したんだよね。

 30歳の誕生日を迎えたとき、しばらく恋愛もしてなくて、好きな人もいない私だったから。もう結婚なんて出来ない人生なんだろうって諦めてた。

 今の仕事は楽しいし、やりがいがあるから、もっともっと仕事をがんばろうって思ってた。

カリスマネイリストと呼ばれなくても、そこに近い存在になれたら、いいなあって夢に描いていた。

 人生の転機って意外なところに転がってるんだなあ。

 夏木大輝さんと結婚をして、私は妻になったんだね。

 妻になって、私は大輝さんを支えられる女性になりたいと思う。

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