ケイヤク結婚
 男の人を信じられないだけ。だから恋愛ができないの。

「あと、結婚式なんだけど」

「結婚式……ですか?」

 私は大輝さんの車の前で足を止めた。

「したくないですか? 俺としては、出世のために上司に恩を売る良い機会かと思っているのですが」

「そうですよね。結婚式って必要ですよね。私、まだ結婚した実感がなくて。すみません。私も、結婚式はしたいです。友達を呼びたいですから」

 そのために結婚したようなものだから、私の場合。

 友達のグループ内で、最後の一人にならないための入籍。

 式をあげなかったら、結婚したことを報告できない。

「それは良かった。今週末にでも、式場を探しましょう」

 大輝さんが車のロックを解除すると、私は助手席のドアを開けた。

「ごめんなさい。週末は仕事なんです。基本、水曜日休みなので、できれば水曜日がいいんですけど」

 無理……かな。
< 61 / 115 >

この作品をシェア

pagetop