君のための嘘
「六本木という所は東京ですか?そこの警察署に連れて行ってくれるんですか?」


10歳まで埼玉県で生活していた夏帆だが、地理がまったくわからない。


「夏帆さん」


「は、はい?」


ラルフは夏帆の方に顔を向けた。


「会ったばかりの人間を信用して欲しいと言っても無理がありますが、僕を信用してくれますか?貴方の手助けがしたいんです」


信用……タクシーに乗ったのは成り行きだけど、信用と言うか、悪い人じゃないと思ったから付いてきた。


「生活のめどがつくまで、僕のマンションに滞在すればいいと思って」


「ラルフさん……」


考えもしなかった提案をされて、夏帆は戸惑った。


それを見たラルフの顔にも困ったような笑みを浮かべた。


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