君のための嘘
いけない、いけないっ、ぼんやり考えちゃだめ。


冷蔵庫から昨日の残りのケーキが入っている箱を取り出す。


お皿、お皿……。


食器棚の高い位置にある扉に手をかけた時、その手に手が置かれ押さえられた。


「僕がやるよ」


ラルフだった。


夏帆はやけどを負った時みたいにパッと手を降ろした。


「まだ緊張しているの?」


「えっ?ううん 違うの ちょっと考え事を……」


「そう……その可愛い頭で何を考えているのか知りたいな」


ラルフはケーキ皿を台の上に置く。


「た、たいしたことじゃなくて……」


ラルフの指が夏帆の顎に触れるのを、金縛りにあったかのように動けずに夏帆はいた。



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