君のための嘘
薄いブラウンの瞳に見つめられ、身体が痺れたように動けない。


「ラルフ……?」


「ごめん……キスするよ」


小さく言葉にしたラルフは夏帆の顎をクイッと持ち上げて唇を重ねた。


驚いて夏帆の目が丸く、近すぎるラルフの顔をただ見るだけだった。


重なった唇は啄むように上唇と下唇をされて離れた。


「……ラルフ?」


カウンター越しから声をかけたのは美由紀だった。


「美由紀、なんの用かな?必要なものがあったら言ってくれれば持って行く」


「お手伝いしようと思ったけれど……お邪魔だったようね」


「ああ、僕と夏帆ちゃんだけで大丈夫だから」


夏帆は美由紀の方へ振り返られずにいた。


今されたキスが媚薬のように心臓をドキドキさせ、身体が麻痺した様に動けない。


< 193 / 521 >

この作品をシェア

pagetop