君のための嘘
ラルフの声に驚いたのは侑弥と美由紀のふたりもだ。


振り返った後ろに夏帆の姿を見て、侑弥が一瞬うろたえた表情になった。


「おふたりは仲が良いんですね」


夏帆は今聞いたことは何も聞かずにテーブルにトレーを置いた。


「え、ええ。もちろん」


美由紀は取り繕うように返事を返した。


「ラルフ、紅茶を淹れ代えたから飲んでね?」


夏帆はソファに座ったラルフに笑みを浮かべた。


「ありがとう」


ラルフも美由紀に見えるように夏帆に甘い笑みを向けた。


******


夜も更け、眠る愛娘を抱きかかえた侑弥と美由紀は帰った。


キッチンで洗い物をしながら、夏帆はふたりの会話を思い出していた。


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