君のための嘘
あっという間に2人を乗せたエレベーターは30階に到着した。


玄関らしきドアの前に立ったラルフは、指をセンサーに当てている。


指紋認証……なんてハイテクなマンション……。


「カギはないから貴方のも登録しなくてはいけませんね あとで登録しましょう どうぞ、入ってください」


高級感あふれる玄関のドアを開けて、夏帆に先に入るように促す。


「あ、あのっ、どうして私のこと、信用するんですか?会ったばかりなのに」


疑問に思っていたことを口にした。


「なんとなく」


「な、なんとなく……?」


「困っている人を見たら見捨てておけない性質(たち)なんです」


柔らかい笑みでさらっと答えたラルフは、靴を脱ぎ部屋の中へ消えていく。


夏帆もパンプスを脱ぎ、室内へおそるおそる足を踏み入れた。


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