君のための嘘
アメリカの住所を書き、滞在先の箇所で手が止まる。


夏帆の手が止まったのを見て、ラルフは彼女の横から首を伸ばした。


「ああ、住所ですね ペンを貸してください」


手を差し出したラルフは夏帆からボールペンを受け取る。


美しく整った字に夏帆は思わず見惚れてしまう。


なんでもきれいな人なんているんだ……。


「書けました これを提出すれば終わりですね」


「あ、ありがとうございます」


記入した用紙をラルフは渡すと、夏帆は窓口へ行った。


警察署の紛失担当者に、バッグが見つかる可能性は低いと言われてしまった。


落としてから辺りを見渡したのになかったのは意図的に盗まれたはずだと。


分かっていたが夏帆はど~んと暗い海の底へ落とされた気持ちになり、表情がこわばった。


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