君のための嘘
玄関でカシミアのコートを羽織ったラルフは、祖母の自慢の庭園に向かった。


草履に慣れていないのか、彼女の歩き方がぎこちない事に気づいたラルフだが普通の歩幅で歩いた。


夏帆しかエスコートしたくないのだから、今のラルフに優しさは見られない。


夏帆だったら……腕に掴まらせて、どんなにゆっくりでも隣を歩くだろう……。


傷つき辛そうな夏帆の顔を思い出し、ラルフの胸がぎゅっと鷲掴みされる様に痛んだ。


だめだ、君の事を考えるとおかしくなりそうだ。


違う事を考えなければ。


クリスマス・イブのパーティーに引き合わせようとした令嬢が彼女なのか?


そんな事を考えフッと笑ってしまうラルフ。


相手が誰だって同じだ。



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