君のための嘘
ラルフが茶室に入り、ふすまが閉まると夏帆は手前の部屋に連れてこられていた。


すぐ隣には夏帆を見張る畑中がいる。


夏帆は部屋の隅に佇み、ふたりの会話を嫌々ながらも聞くことになった。


ここから離れたかったけれど、畑中と呼ばれる男がいて逃げられない。


ラルフに自分がここにいることも知られたくなかった。


ラルフの祖母は孫がお遊びで夏帆と付き合ったんだと分からせたかったのだと思う。


しかし、今のラルフの言葉に夏帆は思わず息を呑んだ。


ラルフの言葉に戸惑ってしまう。


私を愛していると言ったのは、おばあ様を騙す嘘だと思う。


けれど、心の片隅で期待してしまう自分がいる。


夏帆は困惑した顔でふすまを見つめた。





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