君のための嘘
「……辛い過去を知ることになって申し訳なかった」


「……ほっといてくれれば良かったのにっ」


夏帆は髪を拭いていた手を止め、責めるように言った。


「そうだね、こんな方法を取ってしまい、僕の考えが足らなかったよ でも、事実を知ってしまったからには避けきれない問題もある」


きつい言い方をされてもラルフの静かな口調は変わらない。


「避けきれない問題って?」


「君には祖父母がいる」


「あんな人!違うわ!私を拉致した人よ?あんな酷い事が出来るなんて信じられないっ」


あの人を祖母だなんて思えない。


母を信じずに認めなかった。


もし認められていたら、私は小さい頃、寂しい想いをせずに済んだはず。


「あれは僕がいけないんだ 黙って籍を入れたせいで強硬姿勢になったんだ」


夏帆に血の繋がっている祖母を悪く思って欲しくない。


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