君のための嘘
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夏帆は真夜中に目を覚ました。隣にはラルフが眠っている。


ダウンライトの暗めのオレンジ色に照らされたラルフの寝顔は天使のよう。


静かすぎて呼吸をしているのか、不安になった夏帆は上体をそっと腕で支え、ラルフが呼吸しているか確かめる。


良かった……。


いますぐ死んでしまうわけじゃないとラルフは言った。


残念ながら激しい事は出来ないけれどと、軽口を叩く余裕もあった。


泣き過ぎて、目がヒリヒリする。


ラルフを見つめる目を瞬かせ、夏帆は静かに頭を枕につける。


神様、ラルフと1秒でも長く過ごせますように。


そして……死ぬ時は……苦しまないで欲しい……。


他には何も望みません。


ラルフが安らかに過ごせますように。



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