君のための嘘

祖母の思い

夏帆は額に触れるキスで目を開けた。


目の前にラルフの王子様のような整った顔がある。


「おはよう」


にっこり笑みを浮かべたラルフに夏帆の胸がトクンと鳴る。


「おはよう……」


「一生分、泣いたせいで酷い顔になっているよ」


可笑しそうなラルフの笑い声。


「えっ!?」


夏帆は慌ててベッドから出ると、洗面所に向かった。


大きな鏡を見て夏帆は頭を殴られた様に眩暈を覚えた。


「酷すぎる……」


瞼はぷっくり腫れ上がり、白目は充血。


顔も心なしかむくんでいる。


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