君のための嘘
「……そんなにじっと見ないで……」


タオルをあてていると、じっとラルフに見られて夏帆は言った。


「どんな顔をしていたって、夏帆ちゃんは夏帆ちゃんだから それにそんな顔も可愛いよ 僕の為に泣いてくれたのだから 愛おしくて仕方がない」


電子レンジから取り出そうとしていた夏帆の動きが固まる。


朝っぱらからお砂糖の何倍も甘い……。


「夏帆ちゃん?」


背を向けて動かなくなった夏帆をラルフは背後から抱きしめる。


「愛している」


夏帆は髪の毛にラルフの唇を感じた。


幸せだと思える時間だった。


ずっとこうだったらいいのに……。


ぅ……ダメ、またそんな事を考えたら涙が止まらなくなってしまう。


夏帆は下唇を噛みしめて耐えた。


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