君のための嘘
並んで座ると、気まずい雰囲気が流れているように夏帆は居心地が悪い。


とはいえ、霧生ホールディングス社の社屋は目と鼻の先。


そう思った矢先、祖母が運転手に向かって口を開いた。


「先に玲奈さんの所へ行ってちょうだい」


玲奈さん……?


「貴仁の妻として紹介するのだから、その格好を改めなくてはね」


やんわりと夏帆の服装を諌められる。


今着ているのはラルフからプレゼントされたキャメル色のコート。


その下は普段着だが。


出掛けた先が書店とあって、ジーンズとゆったりとしたセーターを着ていた。


「本当ならお着物を着て欲しいくらいだけど、外国育ちの貴方は窮屈でしょう わたくしが贔屓にしているセレクトショップへこれから行きますからね」


有無を言わさない祖母に、夏帆は何も言い返せなかった。


ラルフの為におばあ様を知る努力をする。


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