君のための嘘
「偶然にマンションの近くで会って……」


「出かけたの?」


「うん、本屋さんに――あっ!」


さっきまで手に持っていた本が無かった。


さっきの部屋のソファに置き忘れてきたんだ!


夏帆は右手を口元にやり、青ざめる。


「どうしたの?買ったばかりの本を落とした?」


ラルフが慌てた様子の夏帆に聞く。


「心臓病のことを勉強しようと思って買ったの!さっきの部屋だと思うから取ってくるね!」


夏帆はヒールの高いパンプスで転びそうになりながらドアノブに手をかけた。



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