君のための嘘
「貴仁さん、貴方の執務室に行きましょう」


何を考えているかわからないような能面を貼りつかせたような祖母の顔。


ラルフには本の意味するものが、自分たちのどちらかだと考えているようだと分かった。


「行こう、夏帆ちゃん」


ラルフは口元を引き締めて、床に張り付いてしまったかのような夏帆を自分の執務室に促す。





執務室のドアが閉まると、祖母が重い口を開いた。


「この本はどういうことなのですか?まさか、夏帆さんは心臓病なのですか?」


数か月前まで一緒に暮らしていたラルフが心臓病だとは夢にも思っていないようだ。


しかし、よく考えれば分かる話だ。


ラルフの実の父も心筋症で亡くなっている。


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