君のための嘘
畑中が祖母に手を差し伸べる。


祖母はゆっくり立ち上がると、ラルフと夏帆にうつろな視線を向けた。


「頼みがあります」


祖母は静かに言う。


「なんでしょうか?」


「わたくしの本当の気持ちは本家で一緒に住んで欲しいのです しかし、あなた方の邪魔をするほど野暮ではありません 時間のある時は顔を見せて欲しいのです それから貴仁さん、決してあきらめてはいけませんよ」


その言葉に夏帆は、祖母に対して見方を変えた。


本当に強い人、だけど心根は優しい人なのかもしれない……。


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