君のための嘘

可愛い誘惑

「ラルフ、ごめんなさい……私がそそっかしいから……」


申し訳なくてラルフの顔が見られない。


ラルフは夏帆に近づくとそっと肩を抱き寄せた。


「言っただろう? いつかは知られるんだ ちょうどいい機会だった」


本当は会社ではなく、静かな屋敷でと思っていたラルフだが、落ち込んでいる夏帆を励ます。


「なかなか言い出せなかっただろうから」


「本当にごめんなさい……」


「夏帆ちゃんの方が病気みたいだよ 座って 少し待っていてくれるかな? ランチに出かけよう」


「ううん、お仕事の邪魔をしちゃうから帰るよ」


「君と居られる時間が少しでも惜しいんだ そうだ、毎日一緒に出勤して、そこに居て欲しい」


にっこり微笑みを浮かべながら話すラルフ。


夏帆にはそれが本気のように思えたし、だけど自分を励ますための軽口なのかもと考える。


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