君のための嘘
彼の瞳は入って来た時から、分娩台に横たわる夏帆に向けられているが、疲れ切って、目を閉じていたせいで近づく彼に気づかない。


「夏帆ちゃん」


その声にピクリと夏帆の瞼が開く。


「ラルフっ!」


疲れ切っていた夏帆の目が大きく見開かれる。


「遅くなってごめん」


ラルフが夏帆の手を握った瞬間、陣痛が始まった。


夏帆の顔が痛みに歪み、ラルフの手がギュッと握られる。


こんなか細い腕で、良くこれだけの力が出ると感心するくらいにの力だった。


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