君のための嘘
「リリさん、彼女はこのままでいいんです」


ラルフの口添えもあってか、リリは肩をすくめた。


「……わかったわ じゃあ、原石? 磨きたくなったら、ここに連絡をちょうだいね?」


スワロフスキーでデコレーションさせたキラキラ光る名刺入れから一枚名刺を取り出すと、夏帆に手渡した。


美容家 リリ・星野 住所と携帯の番号が書かれていた。その名刺もピンク色で花が描かれており何とも可愛らしい。


「じゃあ、行くわ、原石、ラルフたんはお金持ちだから、ケーキをたくさん買ってもらいなさいな」


そう言うと、ラルフにウインクしてリリは近くで待っていた数名の男女と店を後にした。


リリが去ると、夏帆は途端に気まずくなった。


ラルフさんはケーキが苦手……。


「ラルフさん、ケーキはいいです 出ましょう……」


「夏帆ちゃん!」


夏帆はたったリリが出て行ったガラスの扉を開けて外へ出た。


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