君のための嘘
外へ出ると、ラルフがすぐに追って来た。


ラルフを見る夏帆の瞳が揺れている。


「……どうして……どうして無理をするんですか?」


「ごめん、夏帆ちゃん 落ち込んでいる君を見ていたらそんな真似をしていたんだ」


ラルフの口調が変わった。


なだめる様な優しい声を聞いて、夏帆の目頭が熱くなって俯いた。


ケーキのデザートはコースに含まれていた。


ラルフはチョコレートケーキを選んだが、夏帆にあげるつもりでいた。


「……優しいんですね でも、知り合ったばかりだし、好きでもないのにそんな事をする必要はないと思うんです」


同情心からなにこれとやってくれる彼だが、今の夏帆には胸が苦しくて仕方ない。


「夏帆ちゃん!」


ラルフの声は説得するように大きくなった。


通行人に注目を浴びてしまっているが、今の夏帆にはどうでも良かった。


< 74 / 521 >

この作品をシェア

pagetop