君のための嘘
「とにかく、もう少し慣れるまでここにいた方が良い いいね?休みになったら東京を案内するよ」


押し切られるような形で、夏帆は頷いていた。なんて意志が弱いのだろうと考えるのはそれから少し時間が経ってからのベッドの中。


「リリさん、夏帆ちゃんを気に入っていたね」


「え……あれは、気に入られたんですか?」


「そうだよ、気に入らなければ磨いてあげるなんて言わない人だよ リリさんは」


「あの……リリさんって……オカマ?」


「あぁ 今で言うニューハーフだね」


「どうして知り合ったんですか?」


「大学生の頃に一度だけショーのモデルをしたんだ その時、ヘアーメイクの担当をしてくれていたのがリリさんなんだよ それから時々、飲みに行く友人に」


夏帆はやっぱりモデルをしていたんだと納得した。


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