君のための嘘
「どうして一度だけなんですか?」


今でも街を歩けば、じろじろと見られるくらいなのだから、モデルをしたら、もっともてはやされたに違いない。


「なんかもったいない……」


男の人でこれだけ透明感があって、カッコいい人はいないだろう。


その美貌なら、第一線で活躍できそうだと夏帆は思った。


そんな事を夏帆が考えていると、ラルフがフッと笑みを漏らす。


「何が可笑しいんですか?」


ラルフが笑みを浮かべると、甘さが増して更にカッコよくなる。


「夏帆ちゃん、リリさんは僕が女の子を連れているとかなり酷い事を言うんだけど、今日は違ったなと思ってね」


「えっ……」


何気ないラルフの言葉に、夏帆の胸がツキンと痛む。


< 80 / 521 >

この作品をシェア

pagetop