君のための嘘
レジはまだ日本のお金に慣れていないから無理だ。


そして最も無理なのは惣菜作り。


最初惣菜ってなんだろうと思ったら、その下に詳しく内容が載っていた。料理が苦手な夏帆にとって、一番無理な仕事に違いない。


自分に出来るのは品出しだ。これしかない。


えーっと……履歴書に写真を貼って、連絡をしてから面接……。履歴書ってなんだろう……。


ラルフに聞いてみよう。


スーパーマーケットを後にした夏帆は、ラルフのマンションへ戻った。


******


昨日と同じ時間に帰って来たラルフ。


玄関の開く音を聞きつけて、夏帆は迎えに出た。


「お帰りなさい」


ひんやりとした空気を身体にまとったラルフ。


「夏帆ちゃん、ただいま」


朝と変わらずの爽やかな笑みを浮かべた。


「出迎えられるっていいもんだね」


トレンチコートを脱ぎながらラルフは言った。


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