【十の瞳】
「おい、クローバーの6、止めてる奴どっちだよ……!」
『パス』を使ったファニーペインが焦り出す。
「そっちこそ、ハートの5止めてるんじゃないの?」
「俺じゃない俺じゃない」
「じゃあ君?」
十二愛を見る。
彼女は首を横に振る。
「はい、僕でした~」
僕はしれっと、ハートの5を出す。
ファニーペインからはブーイングの嵐だったが、それまで興味なさそうにしていたグースが急に、
「フホホホホ……」
と籠ったような声で笑いだし、えどがぁさんが、
「コロ君もなかなかやるねぇ……」
にやりと、笑った。
八野だけがバツが悪そうに、少し離れた所からこちらを見ている。
このゲームの勝ち順は、十二愛、僕、ファニーペインとなった。
切り札があるのに、ファニーペインをからかって『パス』なんてしなければ、僕の一抜けだったのだが、最下位でないのなら上出来だろう。