【十の瞳】
歩くと、ボリュームのあるフリルが揺れる。
彼女の正体は、このフカフカした布の集合体なのではないかと錯覚しそうになる。
現実味のないからだ。
不安になってしまいそうなほど、十二愛から重さというものを感じなかった。
だから、彼女を抱えたまま階段を上がるのも楽だった。
彼女の部屋に着き、すぐにベッドに寝かせる。
僕は電気を点けてから、傍らの椅子に腰かけた。
十二愛はなにも言わなかった。
彼女は固く目を閉じ、それこそ本物の人形のように体を横たえている。
だが、呼吸は落ち着いたようだ。同じリズムでわずかに上下する胸を見て安堵する。
――美しい十二愛。紡ぎ車の名探偵。
彼女は、この非常事態を、こんなふうに停止したまま過ごすのだろうか。