【十の瞳】



歩くと、ボリュームのあるフリルが揺れる。


彼女の正体は、このフカフカした布の集合体なのではないかと錯覚しそうになる。


現実味のないからだ。


不安になってしまいそうなほど、十二愛から重さというものを感じなかった。


だから、彼女を抱えたまま階段を上がるのも楽だった。
 

彼女の部屋に着き、すぐにベッドに寝かせる。
 

僕は電気を点けてから、傍らの椅子に腰かけた。
 

十二愛はなにも言わなかった。
 

彼女は固く目を閉じ、それこそ本物の人形のように体を横たえている。
 

だが、呼吸は落ち着いたようだ。同じリズムでわずかに上下する胸を見て安堵する。
 


――美しい十二愛。紡ぎ車の名探偵。
 



彼女は、この非常事態を、こんなふうに停止したまま過ごすのだろうか。



< 129 / 150 >

この作品をシェア

pagetop