【十の瞳】
「おや、知らなかったのかい?
それでは、ここの近くにあるのは、全部廃村だという事も?」
チーズを呑みこみながら、こくこくと首を縦に振った。
「まぁ、よくある話なんだが……ダムになるというんで、住民は皆引き払ったのにさ、
結局は資金が足りなくなったとか、政府が方針を変えたとかで、計画は中止になってしまったんだよ。
もう、だいぶ前の事だけどもね……」
すると、僕の横で既に出来上がっている平三郎が、
恐い顔の割に馴れ馴れしく、寄りかかって来ながら、
「そうだぞぅ小僧……おまけに、ここはなあ?
怖ぁあい伝説のある土地なんだぜぇ……」
その合い向いで、
「まったく、仮にも『紡ぎ車』のツアーメンバーに選ばれたんですから、探偵たるもの、下調べはしておくものでしょう?」
と、八野真綾。
ぶんぶん煩くて、蜂のようにチクチク厭味な事を言う。
大きなお世話ですよぅだ。