【十の瞳】
「どこに、行くの?」
尋ねると彼女は、歯をかちかちと鳴らして、懇願した。
「……み、見逃して……お願い……!」
十二愛は、怯えきっているようだった。
この異常事態に、耐えられなくなったのだろうか。
……あるいは何か、知っているのか……。
「どこに、逃げるの?」
「……ここじゃない、どこか」
「逃げられないよ。
帰り道は、塞がれてるんだから……」
「……でも、まわりが廃村だとは言ってるけど、まだ建物は残っているはずだし……」
「住人がいなくなってから、何十年も経ってるんだよ。
人の住まない家は、当然荒れる。
草だの虫だの獣だの、色々入り込んで荒れているかもしれないよね。
肝試しにはうってつけだろうけど、……この大雨の中、
君が避難するのに適した環境であるとは、とても思えないよ……」