【十の瞳】
だけど、彼女のそのあからさまな態度は不謹慎以外の何物でもなく、皆の顰蹙を買った。
そういう事は、例え思っていても口に出すべきではないだろう。
気まずい緊張が、応接室を漂う。
誰かの会話が途切れる度に、不意に厭味なくらい、静まり返ってしまう。
昨日会ったばかりの、本名すら分からない人達。
けれども僕等は、誰一人として身分を明かそうとしなかった。
これは、ネットで知り合った人間同士の特徴かもしれない。
お互いの事を知り過ぎるのは、禁忌だという暗黙の了解……。
こんな事が起こった、今でさえ。
埒が明かないまま、時間だけが過ぎた。