リアル
とある事件の張り込みでこの店を使っていた生野に惚れたのは自分からだ。
一見クールだが正義感溢れるその眼差しが眩しく感じた。
端から相手にされないことは分かっていた。
それでも積極的に話し掛け、無事犯人が逮捕された時はもう会えなくなるのが嫌で、無理矢理連絡先を聞き出した。
それからもずっと積極的に行動した。
刑事である彼の身体を気遣う振りをしながらも、何度もメールや電話をした。
好きだと伝え続けた。
それに生野が根負けするような形で付き合いが始まった。
最初は嬉しくて幸せだった。
だがすぐにある影に気付いた。
まめに連絡をする相手がいる。
それに気付いたきっかけなどはもう忘れた。
でも、こっそりと盗み見た携帯電話に残された発信履歴とメール。
雪穂薫という名前は男か女かは分からなかった。
それでも読んだメールの内容から女だと判断出来た。
薫からメールの口調は素っ気ないものだが紛れもなく女性が打った文章だった。
それも、生野を愛する女性が。
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